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お誕生日おめでとう。
何か欲しいもの、聞いておけばよかったと思って。
うん。

俺？　俺は、今ちょっと全部お渡しするのが厳しいので…
嫌いだからじゃないからね。
受験生になったので、ちょっと我慢案件が増えた感じ。
ごめんね。

それ以外で何か。明日、ケーキ食べに行く？
あっ、高野とデートか、そうか。
じゃあそのあと会おう。

うん。少しでいいから顔が見たい。
俺のわがままだから、無理なら別の日でいいけど。
いいの？　やった。

…うん？　――うん。いいよ。
どんなやつ？　たぶん、色とか形とか、詳しく言ってもらったほうがいい。
シルバーの可愛いやつ？　俺基準の可愛いでいいのか、それ。
サイズ…サイズがあるのね。ちょっと待ってメモするから。
アッ　錦戸　いつ戻って…や、おかえり。ちょっとメモ取りに来た。

（バタバタする音）

もしもし。
ごめん、さっきのサイズもう一度教えてくれるか？
…うん。わかった。

明日、高野とデートしてる間に探してみる。
明日中にいいのが見つからなかったら、お茶でもおごる。

うん、俺…も…　ッ楡井いつからそこにいた！？

なんでもない、なんでもないです…
夜中の電話はハードルが高かった。
明日、また。

＊＊＊

（やたらと騒がしい電話口）

（翌日放課後、商店街であれこれ探し回って、見つけて来た指輪は
ピンク色の星型キュービックジルコニアが嵌まったもの）

「かわいいかどうかがわからなかったから、
リコに似合いそうなものを探したつもりなんだけど…
お誕生日、おめでとうございます」

10月10日も残り数時間というところで、
やっとプレゼントを渡せた、かもしれない。